サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
エンジェルフェイス
【2016年 フラワーカップ】高貴な香りを放つ春の名花
カナダの最優秀古牝馬を3回受賞した母ワンフォーローズ(その父テハノラン、Ⅲ・メイプルリーフS2回、同・シーグラムC)より連想され、優美な花を咲かせる薔薇の品種が名付けられたエンジェルフェイス。様々なカテゴリーに一流馬を送り出すキングカメハメハの産駒である。同馬の全姉がレディアルバローザ(中山牝馬S2回)。半姉にもキャトルフィーユ(クイーンS)らがいる豪華なファミリーである。
2歳12月に迎えた新馬(阪神の芝1800m)は3着に惜敗。2月の京都(芝1800mを2着)も1番人気(単勝2・2倍)に反してしまったが、最後まで粘り強く食い下がっている。続く阪神(芝1800m)を順当に逃げ切った。
一気にハードルを上げ、フラワーCに挑む。ここでも単勝2・9倍の支持を集めた。スタートを決めて先手を奪うと、狙い通りのスローペースに持ち込む。ラスト3ハロンからハロン11秒台にギアを上げ、早めにスパート。後続に影を踏ませることなく、コンマ2秒の差を保ったまま、栄光のゴールに飛び込んだ。
「勝ちにいって、結果を残せたのは立派。すっとハナを切れる先行力があり、鞍上の意のままに動ける。ようやく血統の良さが前面に出始め、いい方向へ噛み合ってきたところ。牝ながら馬格に恵まれ、飼い葉もよく食べてくれるからね。順調に筋力アップ。未体験だった長距離輸送やコーナー4つのコース形態も克服してくれた。クラシックとなれば、その時点で心身が抜けていないと通用しないし、運にも左右されるけど、目指すオークスでも、上手に息を入れらさえすれば、長く使える脚が生かせるはず」
と、調教パートナーの荻野仁調教助手(藤原英昭厩舎)も笑みを浮かべた。
だが、オークスは10着。2番手から抜け出しを図ったが、道中の流れは厳しく、ラストで馬群に飲み込まれてしまう。これで張り詰めた気持ちが途切れてしまい、秋シーズン以降は紫苑S(16着)、秋華賞(16着)、ターコイズS(13着)、ニューイヤーS(13着)と見せ場をつくれなかった。
疲れが長引き、1年間のブランク。しかし、懸命の立て直しが功を奏し、5歳初戦の新春Sで3勝目を挙げた。京都牝馬Sも4着に健闘。ところが、中山牝馬S(8着)まで歩んだところで、鼻出血を発症してしまい、早すぎる引退が決まった。
ロードレゼル(2勝、青葉賞を2着)、クランフォード(4勝)を送り出し、繁殖としても魅力はたっぷり。新たなつぼみの才能開花が待ち遠しくてならない。