サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

エポカドーロ

【2018年 皐月賞】群雄割拠の時代に雄叫びをあげた日高の黄金

 セレクトセール(当歳)にて3400万円で落札されたエポカドーロ(イタリア語で黄金の時代との意味)。オルフェーヴルのファーストクロップであり、同世代にはラッキーライラック(阪神JF、エリザベス女王杯2回、大阪杯)がいる。母ダイワパッション(その父フォーティナイナー)は、フィリーズレビューやフェアリーSの覇者であり、同馬の半弟にあたるキングストンボーイ (現2勝、青葉賞を2着)も非凡な能力を垣間見せている。ユニオンオーナーズクラブの募集総額は4500万円に設定された。

「2歳8月に入厩した当時も淡々と乗り込めた反面、体力的に頼りなかったんです。父は万能タイプながら、母が短めの血統背景。イメージとは異なり、エンジンがかかるのに時間を要し、どのあたりに適性があるのか、見極めも難しくて。手探りな状況でデビューさせたというのが正直なところでした」
 と、藤原英昭調教師は振り返る。

 10月の新馬(京都の芝1800m)は3着。ここで3か月半のリフレッシュを挟み、すっかり軌道に乗る。京都(芝1600m)、あすなろ賞と危なげない逃げ切り。あっという間にクラシックへの視界が開けた。

「3歳春になり、めきめき充実したあたりは、父の血なのかもしれません。鍛えて味があり、どんどん強化されるライバルを凌ぐ進度でパワーアップ。先行しての渋太さが武器でも、流れに応じて柔軟に立ち回れるように。以前は怖がりだったのに、精神面も大人になってきました」

 スプリングSは、いったん2番手から抜け出し、わずかハナ差の2着。懸命に走り抜いても反動はうかがえなかった。さらに状態を上げ、皐月賞へと駒を進める。

 混戦模様の一冠目。7番人気(単勝14・5倍)に甘んじたものの、演じたパフォーマンスは実に鮮やかだった。離して先行する3頭に惑わされず、しっかり脚をためてスパートのタイミングを図り、あっさりトップに踊り出る。後続に2馬身の差を付ける完勝だった。

「ここまでのプロセスから、狙っていた舞台です。小倉のあすなろ賞も巧みな機動力を発揮していて、時計も持っていますからね。コンディションは絶好。チャンスがあると見ていましたが、こんな余裕の勝ち方ができるなんて、驚くしかなかったですよ。何通りか思い描いたなか、想定していたしたポジション。実質、単騎で逃げているかたちとなり、リラックスして運べ、ベスト展開となりました。渋った馬場状態(やや重)も味方。生産した日高地区の喜びが伝わってきて、爽快な気分です。関係者すべての力が結集した結果。なかでも、戸崎圭太騎手が一番、感激していましたね」

 スムーズに先手を奪ったダービー。1コーナー手前で左後脚を落鉄していたが、長い直線を粘りに粘る。ラストでワグネリアンに交されたものの、実力を再認識させる2着だった。

 だが、秋以降はリズムに乗れなかった。神戸新聞杯(4着)はスタートで躓いたのが敗因。スローの瞬発力比べとなった菊花賞も8着に沈む。年明け初戦の中山記念は5着。大阪杯(10着)で鼻出血を発症して以降、態勢が整わず、早すぎる引退が決まった。

 アロースタッドで種牡馬入り。この先も厳しい戦いが待ち受けているが、現役時代と同様、前評判を覆す成功を祈りたい。