サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

ウリウリ

【2014年 京都牝馬ステークス】軽快なリズムに乗って繰り出した究極の切れ味

 7歳時の京都牝馬S(12着)まで、全31戦(6勝)を懸命に走り抜けたウリウリ。息長く活躍しただけでなく、卓越した才能も存分に示した。

 稀代のスターホースであり、種牡馬としても日本競馬を牽引したディープインパクトの産駒。母ウィキウィキ(その父フレンチデピュティ)は1勝のみに終わったが、アルゼンチンの名牝系であり、祖母リアルナンバーがG1・ヒルベルトレレナ賞を制している。同馬の全弟に日本ダービーをはじめ、重賞を3勝したマカヒキ、毎日杯2着のウーリリがいて、血統背景も超一流といえる。

 2歳の7月に栗東へ。ゲート試験の合格後はいったん放牧を挟み、慎重に手順を踏みながら仕上げられた。10月の京都、芝1600mで迎えた新馬戦は2着。中1週の同条件を好位から差し切る。

 調教パートナーを務めた田代信行調教助手は、こう若駒当時を振り返る。
「もともと背中はオープン級。柔らかく収縮します。ためれば弾けそうな感触がありましたね。ただ、繊細でカリカリしがち。なかなか飼い葉を食べてくれず、しばらくは体を減らさないようなメニューに終始していました」

 脚の使いどころに難しさが残り、以降は6連敗。クラシックへの出走はかなわなかった。それでも、この間の最低着順はチューリップ賞での6着。大外一気に白百合Sを2着すると、6月の中京(芝1600m)で順当に2勝目をつかむ。

 初体験の重馬場も克服し、ローズSを3着。距離が延長された秋華賞は10着に敗れたものの、勝ったメイショウマンボにコンマ4秒差、2着(スマートレイアー)とはコンマ2秒差に踏み止まっている。大舞台に挑んだ反動も見られなかった。レースのラスト3ハロンをコンマ6秒凌ぐ33秒7の末脚を爆発させ、衣笠特別を快勝する。

格上挑戦にもかかわらず、京都牝馬Sをあっさり勝利した。繰り出した上がりは32秒9の鋭さ。狭いインを鮮やかに突き抜け、さらなる飛躍を予感させた。

「素質だけで走っている段階を脱しました。敏感なところは相変わらずで、突然、跳ねたりするとはいえ、決して自分を見失わない。角馬場で落とされたこともあるのですが、逃げようとせず、平然とこちらを見ているくらいです。本来は賢く、教えれば素直に吸収してくれます」

 ハナ差だけ敗れた阪神牝馬S(2着)にしても、器用に馬群をさばいたうえ、鋭い切れを発揮する好内容。ただし、ヴィクトリアマイル(16着)以降は足踏みが続く。そのなかでも、阪神C(4着)、阪神牝馬S(2着)と、1400mでは安定した成績を残す。

 断然人気に応え、安土城Sをレコードタイムで完勝。陣営はスプリント路線へと舵を切った。ハイラップが刻まれたCBC賞。ラスト1ハロンで追い出されると、重馬場も苦にせず、瞬く間に突き抜けてしまった。

「体力の向上は目覚ましく、目標に向ってきちんと負荷をかけていけるように。いい筋肉が備わり、1200m仕様のスタイルになってきました。忙しい条件に替わっても、メンタル面がしっかりしたことで、道中はリズムを守って追走。父らしい決め手をフルに発揮できましたよ」

 セントウルSは2着に惜敗。スプリンターズS(5着)でも、末脚は光った。その後は徐々に着順を落したとはいえ、深い愛情に包まれ、大切にキャリアを重ねた。

 古馬になっても着実な成長曲線を描き、ターフに軽快なフラのリズムを響かせたウリウリ(馬名はハワイの打楽器名より)。繁殖としての期待は大きい。産駒たちも、胸躍るメロディーを奏でるに違いない。