サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

ウインフルブルーム

2015年 京都金杯】新春に満開を迎えた優美な花

 慢性的な脚部不安を抱えながら、全18戦を懸命に戦い抜いたウインフルブルーム。シーザリオ、ブエナビスタ、トーホウジャッカルらを輩出したスペシャルウィークが父である。母ハナノメガミ(その父サクラユタカオー)は4勝した活躍馬。同馬の半兄にコーナーストーン(4勝)がいる。ウインレーシングクラブにて総額1500万円で募集された。

「派手な尾花栗毛に大流星。1歳の5月に何頭かの候補を見学させてもらったなかでも、鮮烈なインパクトを受けましたよ。垢抜けたスタイルで軽そう。ブラックタイプも魅力でした。コスモヴューファームで乗り進められると、早くから非凡な動きが評判に。ただ、当時は他馬が尻尾を振っただけで怖がる極端な精神状況でしたね。転倒するアクシデントもあって。2歳夏にデビューしたとはいえ、予定より始動が遅れたんです。入厩後はテンションを上げないように心がけ、息を整える程度でレースへと送り出しました」
 と、管理した宮本博調教師は思い出を話す。

 小倉の芝1800mで新馬勝ち。後続を3馬身半も置き去りにした。野路菊Sはクビ差の2着に惜敗したが、千両賞を楽々と押し切り、朝日杯FSも3着に食い下がる。シンザン記念(2着)、若葉S(2着)、皐月賞(3着)と、世代のトップクラスを相手に健闘を続けた。

「普段は大人しく、無駄なことで消耗しない。レース後の回復も早かったですよ。それでいて、いざとなれば態度が一変し、旺盛な闘志を燃やしてくれる。もともとゲートが速く、持ち味は先行力でしたが、スイッチがオンとなっても自分を見失うことがありません。折り合いが付き、どんな相手でも崩れない。身のこなしが柔軟なうえ、心肺機能だって優秀。仕上げも楽でした」

 ところが、ダービーの直前に歩様が乱れ、無念のリタイア。久々となった神戸新聞杯(13着)こそ失速したが、カシオペアSを鮮やかに逃げ切る。待機勢に有利な展開となったチャレンジC(8着)を経て、一段と充実。京都金杯では渋太く差し返し、念願のタイトルを手にした。しかし、放牧中に左前脚を骨折していることが判明する。

「手術できない種子骨のトラブル。付着している繋靭帯にも炎症を起こし、長期戦を覚悟せざるを得ない状況でした。無事に復帰できたのは、根気強くケアに努めた牧場スタッフのおかけです。現地で十分に乗り込まれていても、なかなか体が絞れなかったので、北海道シリーズではなく、輸送がある夏の福島に照準を定めて帰厩。馬もよく耐えてくれましたよ。しっかり鍛え直し、またパワーアップした実感がありました」

 1年7か月ものブランクがあったのにもかかわらず、福島テレビオープンを快勝。重馬場にノメりながら、小倉日経オープンもクビ差の2着に踏み止まった。

 だが、脚元への負担は大きく、毎日王冠(7着)以降は、結局、11か月もレースから遠ざかった。京王杯AH(13着)、南部杯(11着)、アンドロメダS(12着)と歩んでも、復活のきっかけはつかめない。ディセンバーS(6着)を走り終え、引退が決まった。

 才能をフルブルーム(満開)させた瞬間は短く、勝ち取った重賞はひとつのみ。それでも、中身が濃い競走生活だった。新春を迎えれば、ウインフルブルームの勇姿が鮮やかに蘇ってくる。