サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

ドリームジャーニー

【2007年 神戸新聞杯】たくさんの思い出が詰まった夢の旅路

 ステイゴールドが送った代表格であり、母がオリエンタルアート(その父メジロマックイーン、3勝)といえば、オルフェーヴル(クラシック3冠、有馬記念2回、宝塚記念)の名が真っ先に挙がるが、それに先駆け、父母に最初となるG1のタイトルをプレゼントしたのはドリームジャーニーだった。偉大な血筋との巡り会いについて、池江泰寿調教師は感慨深げに話す。

「調教助手の時代に見識を広げてくれたステイゴールドの産駒で、またいろいろなことを学びました。オリエンタルアートとの縁もかけがえのないものです。その全兄にあたるシュペルノーヴァ(4勝)に跨った思い出もあって、愛着はひと際。ブラッドスポーツの奥深さを改めて実感しましたね。もちろん、ドリームジャーニーで勉強したことが、オルフェーヴルの成功にもつながっています」

 新馬(新潟の芝1400m)、オープン(芙蓉S)と、一気に連勝を飾り、朝日杯FSでは2歳チャンピオンに輝いたドリームジャーニー。開業3年目の池江師にとって、これが初となる重賞のタイトルだった。いまやトップクラスの地位を確固なものにしている陣営に、多大なエネルギーを与えた。

「気の強さや故障とは無縁な脚元はステイゴールド譲り。ただし、小さな体のうえ、飼い食いも細かったので、デビュー戦はごくソフトな調整で臨みました。東京スポーツ杯(3着)では、通常の男馬なみにメニューを強めてみたのですが、テンションが上がってしまって。朝日杯に向かうのにあたっては、落ち着かせることに主眼を置いた調教スタイルに切り替えたのが功を奏しました」

 弥生賞(3着)を経て、皐月賞は8着、ダービーを5着。夏場のリフレッシュを終え、秋は神戸新聞杯から始動した。前半は最後方のポジションとなったが、武豊騎手は無理に押し上げず、直線まで脚を温存。大外へ持ち出すと、一気の差し切りを演じる。

「回転の速いピッチで勝負する個性なのに、マイルのG1を制したうえ、長丁場の菊花賞でも5着に食い下がっています。精神的にどっしりし、繊細さが薄れつつありました。2歳から能力が際立っていた一方、成長力にも目を見張るものがありましたよ」

 ゲートに課題を残し、以降の3戦で期待を裏切ったものの、小倉記念に続き、朝日チャレンジCを連勝。天皇賞・秋(10着)、有馬記念(4着)、アメリカJCC(8着)と成績が上下動したなかでも、トレーナーはうれしい変化を感じ取っていた。

「中山記念(クビ差の2着)のころになると、従来のトレーニングでは負荷が足りないくらいに。しっかり乗り込んだ成果があり、一段と強靭になりましたね」

 大阪杯を堂々と制覇。いよいよ本格化してきた。天皇賞・春でも長く末脚を伸ばして3着に健闘。宝塚記念での爆発力は圧巻だった。2年半ぶりにG1制覇を成し遂げる。

 5歳の秋はオールカマー(2着)、天皇賞・秋(6着)と歩み、前年も見せ場をつくった有馬記念へ。大目標に照準を合わせ、渾身の仕上げを施せた。3コーナーから大外を進出し、早め先頭から押し切りを狙うブエナビスタをきっちり捕える。父や母父のメジロマックイーンも敗れた夢舞台で、待望の勲章をつかんだ。

 右前脚の球節に炎症を起こすトラブルもあり、以降の7戦は未勝利に終わったドリームジャーニーだったが、7歳まで様々な寄港地で思い出をつくりながら、豊かな旅を続けた。

 種牡馬となっても、ミライヘノツバサ(ダイヤモンドS)、ヴェルトライゼンデ(鳴尾記念、日経新春杯)、スルーセブンシーズ(中山牝馬S)らを輩出。産駒は減少傾向にあるとはいえ、ぜひ黄金の輝きを放つ逸材の登場を期待したい。