サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

アンブロワーズ

【2004年 函館2歳ステークス】長きに渡って輝きを放つ世代の一番星

 2歳7月に函館の芝1000mに初登場すると、3馬身差を付けて新馬勝ちを果たしたアンブロワーズ。函館2歳Sは22キロものマイナス体重だったものの、あっさり不安を一掃した。すっと好位に取り付き、ハイペースを押し切った。

 コンビを組んだのは、短期免許で来日中のダグラス・ホワイト騎手。こう非凡な性能を絶賛した。
「直線はターフビジョンが目が入り、外に寄れる若さを見せたけど、十分に脚が残っていた。少し神経質な面もあるが、センスがいいね。距離はマイルまでこなせるよ」

 父はフレンチデピュティ。勝ち上がり率が優秀なだけでなく、ノボジャック(JBCスプリント)、クロフネ(JCダート、NHKマイルC)、エイシンデピュティ(宝塚記念)、アドマイヤジュピタ(天皇賞・春)、ピンクカメオ(NHKマイルC)、レジネッタ(桜花賞)など、様々なカテゴリーにトップホースを送り出している。

 母フサイチミニヨン(その父サンデーサイレンス)は未勝利だが母の兄姉弟にフサイチコンコルド(ダービー)、グレースアドマイヤ(リンカーン、ヴィクトリーの母)、ボーンキング(京成杯)、アンライバルド(皐月賞)ら。祖母バレークイーンに連なる名牝系である。同馬にも大きな夢が託されていた。

 放牧を挟んで体を戻し、阪神JFに直行する。ここでもワールドスーパージョッキーズシリーズに参戦したホワイト騎手が手綱を取り、いったん先頭へ。わずかハナ差の2着に惜敗した。

「とてもエキサイティングなレース。すべて描いた通りにいったが、あと一歩だったね。いずれトップに立てる器だと信じている。生涯忘れられない馬になるだろう」

 ところが、アネモネS(3着)で圧倒的な人気を裏切ったのに続き、桜花賞は14着に大敗。ストートピーSも8着だった。以降の5戦は二桁着順。2歳シーズンを懸命に駆け抜けた反動が癒えなかったのに加え、精神的にも前向きさを失ってしまい、すっかり調子を崩してしまう。

 新たな環境でじっくりと態勢を整えるべく、開業間もない平田修厩舎より再スタート。10か月のブランクを経て、すでに5歳となっていたが、徐々に本来の輝きを取り戻していく。復帰6戦目のストークSを順当勝ち。オープンでも上位を賑わし、ファイナルSでは目を見張る鋭さの大外一気を決める。

 早熟のイメージを打ち破り、みごとに蘇ったアンブロワーズ。翌春の阪急杯(7着)を最後に、惜しまれつつ引退することとなった。

 コナブリュワーズ(4勝)、テオドール(5勝)、ロシュフォール(4勝、新潟大賞典3着)をはじめ、産駒はコンスタントに勝ち上がっている。すでに繁殖の役目を終えたとはいえ、一族の繁栄を祈りたい。