サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

トーホウアマポーラ

【2014年 CBC賞】盛夏に開花する美しき虞美人草

 2歳8月の小倉(芝1200mを2着)でターフに初登場したトーホウアマポーラ。追い切りが実質2本の臨戦過程だったうえ、出遅れて外を回ったぶん、届かなかった。中2週の同条件を順当に勝ち上がる。管理した田島良保調教師も、非凡な才能を感じ取っていた。

「高速決着は大歓迎。あの夏の小倉開催では、2歳戦のベストタイム(1分8秒5)を叩き出している。ちょっとでも馬場が渋るとのめってしまうからね。それにしても、想像以上の強さだった。一気に夢がふくらんだよ」

 長年に亘って様々なカテゴリーに一流どころを送り出したフジキセキが父。キンシャサノキセキ(高松宮記念2回)を筆頭に、スプリント戦線で活躍する産駒も多い。母はアメリカ生まれのトーホウガイア(その父アンブライドルズソング、地方9勝)。同馬の半弟にあたるトーホウジャッカルは菊花賞の勝ち馬となったが、スピード色が強いファミリーであり、曾祖母のアガセリー(米G3・ヴァインランドH)の産駒に芝1200mを3勝したスリーエフもいる。

「当歳のころより、牝にしては立派な馬体をしていてね。普段はとても人懐っこく、素直な性格。武田ステーブルでの育成もスムーズに進んだし、入厩後も短期間で出走態勢が整った。初勝利後に5か月間の休養を挟んだのは、ソエに配慮してのこと。若い時期に無理をさせなかったことでたくましさを増し、飼い食いも安定した。コンスタントに使っても、テンションが上がらないのが心強かった」

 桜花賞を意識して、エルフィンS(9着)以降はマイルを4戦。こぶし賞(3着)、チューリップ賞(6着)、阪神の芝1600m(3着)と見せ場をつくったものの、決め脚に甘さも目立った。

「やはり短いところが最適。それに、冬場は汗をかかず、身のこなしが硬めに映ったよ。気温の上昇とともに、どんどん調子を上げてくるタイプなんだ」

 1分6秒9のタイレコードであやめ賞を圧勝。好位から繰り出した上がりは、次位をコンマ6秒も凌ぐ33秒2の鋭さだった。ラストまで楽な手応えでありながら、2着に6馬身の差を広げる。

「あれでも、勝負どころでふわふわしていたくらいだった。キャリアを積んで変わる部分も多いと見込んでいたね」

 出石特別(3着)を経て、5か月間のリフレッシュへ。さらに蓄膿症の手術により、7か月余りのブランクがあった。それでも、復帰2戦目の伊万里特別を順当に勝利する。昇級2戦を惜敗したところで、田島調教師は勇退した。同馬を引き継いで新規開業したのが高橋亮調教師である。早速、壬生特別を快勝。若きトレーナーに記念すべき初勝利をプレゼントした。山城特別(クビ差の2着)、うずしおS(1着)と、右肩上がりに進歩を遂げる。

 阪神牝馬S(10着)は重賞の壁に跳ね返されたが、もともと陣営はサマースプリントシリーズに照準を定めていた。3か月間、しっかり充電。そして、CBCでは鮮やかな差し切りが決まった。

「中団の馬込みに入れても、きっちり脚がたまり、イメージ以上の弾け方。心身とも、ぐんと充実しました。こんなに早く、チームで初となる重賞制覇の喜びを味わえ、大切に育ててきた田島先生に感謝するしかありません」
 と、高橋亮師も満面の笑みを浮かべた。

 灼熱の季節に開花したアマポーラ(ひなげし)。秋シーズン以降は好調を維持できず、6連敗を喫したが、ラストランとなった6歳時のキーンランドSを2着して、改めて非凡な才能をアピールした。

 トーホウジュナール(2勝)、 ナイトスラッガー(現2勝)をはじめ、産駒はコンスタントに勝ち上がっている。繁殖としても、いずれ大輪を咲かせるに違いない。