サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
ドモナラズ
【2010年 七夕賞】腕白者に通じた七夕の願い
ユニークなネーミングで人気を集めたドモナラズ(どうにもならず、丹後弁で「どうにもならない腕白者」の意)。スターリングローズ(JBCスプリント)、ビッグウルフ(ジャパンダートダービー)、バンブーエール(JBCスプリント)らを送り出したアフリート産駒らしく、2歳10月に迎えた新馬(京都のダート1400mを2着)以来、しばらくは砂戦線を歩んだ。母アンプルカット(その父ナリタハヤブサ)もダートで3勝を挙げている。
4戦目の京都(ダート1200m)を勝ち上がったものの、昇級後は4走連続して二桁着順に沈む。ところが、半信半疑で試した初のターフ(4歳2月の小倉・芝1800m)で2勝目をマーク。アタマ差の辛勝ではあったが、ハイペースの好位から手応え以上の渋太い伸び脚を発揮した。馬名の通り、気性の難しさは相変わらずながら、休養を挟みながら使われてきたなか、体力アップは明らかだった。
昇級2戦となる瀬戸特別を競り勝ったうえ、クラス再編成後に不知火特別を差し切り、準オープンへ。5戦で見せ場をつくれなかったが、連闘で臨んだ飛鳥Sで一変し、ついにオープンまで出世した。ただし、さすがに壁は厚く、あっさりと5連敗。それでも、短い直線なら集中力が持続する。福島テレビOP(4着)ではしっかりした伸び脚を駆使していた。
11番人気(単勝19・8)にすぎなかったとはいえ、七夕賞は抜けた実績馬が見当たらず、52キロの軽ハンデにも恵まれた。思い切った後方待機策を取り、大外を回すと、レースのラスト3ハロンを1・0秒も上回る34秒7の末脚が爆発。ゴール前でも横並びの接戦をクビ差だけ抜け出し、栄光のゴールに飛び込んだ。
会心の勝利に、柴田善臣騎手はこう晴れやかな笑みを浮かべた。
「以前の騎乗(早春Sで12着)では引っかかってしまい、ハナへ行ってバテバテ。位置取りは気にせず、うまく折り合わせることに専念したんだ。直線手前で馬群が凝縮。ロースロスは大きかったけど、十分に脚がたまっていた。馬場のいいところへ出したら、想像以上に切れたね。先週の宝塚記念(ナカヤマフェスタで優勝)に続き、自分としてはいいかたちで上半期を締めくくれたよ。サマー2000シリーズもがんばりたい。小倉では乗ったことがないから、引退前にぜひ遠征したいと思っていた。この馬とともに行きたいなぁ」
ジョッキーのリクエストに応え、小倉記念へ。だが、同様の戦法では展開が向かず、11着に敗れる。以降も不安定な精神面に泣かされ、結局、復活の勝利はつかめなかった。翌年の七夕賞で5着したのが最後の輝き。6歳暮れまで47戦を戦い、地方・船橋に転出後も4戦して現役を退いた。
乾坤一擲の賭けがはまった感が強いドモナラズの七夕賞ではあっても、競馬の魅力が詰まったドラマチックなレース。勇気を持って勝負すれば、どうにかなることもある。驚きの逆転劇は、いつまでも多くのファンに語り継がれることだろう。