サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

トゥインクル

【2016年 ダイヤモンドステークス】長距離戦にダイヤモンドの光彩を放つ屈強なファイター

 騎手時代に重賞3勝を含めてJRA通算122勝をマークしたうえ、調教助手としても豊富な経験を積んだ牧田和弥調教師。成績は順調に伸びているが、馬づくりへの情熱は燃え盛る一方である。

「ここまでの積み重ねを先につなげ、もっと進歩していかないと。どの馬もレースが嫌にならず、フルに能力を発揮してほしい。そのためには、人とのスムーズなコンタクトが不可欠です。スタッフともども『ナチュラルホースマンシップ』(馬の習性に理解を深め、人間がリーダーとなって自然なコミュニケーションを取っていく手法)を学ぶなどして、きちんと信頼関係を構築するように努めていますよ」

 細やかな取り組みは着々と実を結びつつある。送り出した代表格にロンドンタウン(コリアC2回、エルムS、佐賀記念)、アンドリエッテ(マーメイドS)、イロゴトシ(中山グランドジャンプ2回)もいるが、チームに初のタイトルをもたらしたメモリアルホースがトゥインクルだった。

ドバイシーマクラシックや香港ヴァーズを制した底力を伝え、種牡馬として大成功したステイゴールドが父。母ロングスターダム(その父ノーザンテースト、不出走)の半姉にアローム(エリザベス女王杯に勝ったレインボーダリアの母)らがいる。母にとって11番目となる産駒が同馬であり、待望の出世頭となった。

「すらっとした体型ですし、柔軟なフットワーク。それでいて、強靭さも兼備していて、力の要る条件をこなせるあたりも父らしさですよ。転厩というかたちで手元に来たわけですが、ちょうど心身が噛み合い出したタイミングだったのでしょう。競馬が近付くと立ち上がったり、激しい面を見せるとはいえ、淡々とメニューを消化でき、仕上げに苦労はありませんでした」

 美浦の所属時代はコンスタントに19戦を戦った。不良馬場で行われた3歳6月の東京(芝2400m)は、8馬身差の圧勝。ただし、2勝目が遠かった。ダートの長距離に条件を替えて上位を賑わしたものの、スタートの遅さや器用に立ち回れない弱みに泣く。

 ロングスパートが決まり、荒川峡特別を勝利。出負けした駒ヶ岳特別は、終い勝負に徹して半馬身差の2着に迫った。函館(芝2600m)を順当に差し切ると、札幌日刊スポーツ杯も抜群の末脚で完勝した。

「いきなりやれる能力は伝わってきましたが、ここまで安定して走れるなんて。精神的な成長は明らかです。エンジンのかかりが遅いなかでも、使われるごとに集中力が高まり、ずいぶん操縦しやすくなりました」

 準オープンに昇級後も、確実に脚を伸ばす。オクトーバーS(3着)ではこれまで苦手としたスローの決め手比べにも対応でき、ゴールドアクター(次走のアルゼンチン共和国杯、さらに有馬記念も勝利)に続く速い上がり(33秒6)を駆使した。比叡Sも2着に終わったとはいえ、勝負どころで下がってきた馬に影響され、スムーズさを欠いた結果である。

 ステイヤーズSに格上挑戦し、3着に追い込む。前残りのスローペースに泣き、万葉Sは5着。それでも、トレーナーは重賞でも十分に通用する手応えを得ていた。

「もともと体調の変動が少ないうえ、良くなる余地がたっぷり。典型的な晩生だけに、ますます中身がしっかりしてきましたね。相変わらず調教は目立ちませんが、以前とは反応が違います。メリハリが利いた走りを覚え、コース形態や馬場状態も問いません。しかも、渋った馬場(やや重)は滅法、得意でしたから」

 中団を抑え切れないくらいの手応えで追走したダイヤモンドS。3コーナーから馬なりで進出し、直線に入って早くも先頭へと踊り出る。まったく勢いは衰えず、2着のフェイムゲームに4馬身の決定的な差を付け、悠々と栄光のゴールに飛び込んだ。

 長き下積みの苦労もエネルギーに転じ、まっすぐにスター街道を駆け上ったトゥインクルだったが、天皇賞・春(13着)、函館記念(8着)、札幌日経オープン(2着)と走ったところで屈腱炎を発症。結局、本来のきらめきを取り戻せず、6歳時の札幌日経OP(9着)がラストランとなった。しかし、唯一、勝ち取ったダイヤモンドSの勲章は、いまでも最高級の宝玉を思わせるような、まばゆい光彩を放っている。