サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
アルフレード
【2011年 朝日杯フューチュリティステークス】若き爆発力で切り拓いたヴィクトリーロード
2歳9月に中山の芝1600mでデビューすると、いきなり豪快な差し切りを演じたアルフレード。昇級の壁はなく、きんもくせい特別も楽々と連勝。無傷で朝日杯FSに駒を進める。
ここでも堂々の1番人気(単勝3・1倍)に推された。そして、期待に違わぬ強さを発揮。好位から瞬時に抜け出し、後続を2馬身も突き放す。手綱を託されたクレイグ・ウィリアムズ騎手は、こう最大限の賛辞を贈った。
「底知れない素質馬よりオファーを受け、乗れるのを楽しみにしていた。VTRを見ても、すばらしい勝ち方をしていたし、追い切りに跨った松岡正海騎手からも状態は絶好だと聞き、自信を深めていたよ。
3番枠を引けてラッキーに思った。ぜひアドバンテージを生かしたかったね。ポジションにこだわったわけではないが、リズム良く流れに乗れた。向正面で逃げ馬が左にもたれていて、インはスペースが開いて走りやすかったしね。追い出してからの反応も思い描いた通り。精神的にはまだ子供っぽいけど、どんなレースもできる。来春のダービーだって勝てそうな能力が伝わってきた。また大きな舞台で、この馬に跨りたい」
管理する手塚貴久調教師は、アユサン(桜花賞)、アジアエクスプレス(朝日杯FS)、フィエールマン(菊花賞、天皇賞・春)、シュネルマイスター(NHKマイルC)、ユーバーレーベン(オークス)などで次々にタイトルを手にしていくことになるのだが、これが開業12年目にして初となるG1制覇。感慨深げに喜びを語った。
「決してスタートがいい馬ではないのに、ジョッキーがうまく出してくれました。もう少し後ろから行くのかと思っていましたが、結果的には絶妙。勝負どころでの手応えも十分あり、前が開いたら抜けてくるだろうと思っていましたよ。1、2戦でもすばらしい瞬発力を示していましたからね。
初めて見た当歳の暮れでも、骨量が豊か。どんどん大型に育ちました。入厩してからも内臓が強く、とても健康的。ソエも出ず、調整は順調そのものでした。あっさり連勝でき、次の目標には迷いましたが、その後に放牧を挟んで戻ってきてからの走りを見れば、大きなところにチャレンジすべきだと意を強くしたんです。外見に反して器用さがあり、このコースも克服できると。
まだ完成されていませんし、距離に関してはやってみないとわかりませんが、この先へも夢が広がります」
2年連続で年度代表馬に選出されたシンボリクリスエスの産駒。雄大な馬体や非凡なパワーは父譲りである。サクセスブロッケン(フェブラリーSなどG1を3勝)、ストロングリターン(安田記念)に続くチャンピオンホースが同馬だった。後にエピファネイア(菊花賞、ジャパンC)、ルヴァンスレーヴ(チャンピオンズCなどG1を4勝)を輩出している。
母プリンセスカメリア(その父サンデーサイレンス)は1勝のみに終わったが、祖母が5勝を挙げたラトラヴィアータ。その全兄にチャンピオンスプリンターのサクラバクシンオーが名を連ねる血筋である。
クラシックを意識して、翌春はスプリリングSより始動したが、本調子を欠き、12着に沈む。NHKマイルCでは2着に健闘したものの、ダービーを13着。右前に屈腱炎を発症し、1年8か月ものブランクを経る。
それでも、根気強く立て直され、6歳時の東京新聞杯を2着。新潟大賞典(3着)、七夕賞(5着)と見せ場をつくった。だが、新潟記念(7着)がラストランに。左前にも炎症を起こし、結局、カムバックは果たせなかった。
苦悩が付きまとった後半の競走生活。それでも、青春期の快進撃は、胸のときめきを保ったまま、鮮やかに浮かび上がってくる。現在は帯広畜産大学の馬術部で愛情を注がれ、競技会にて活躍中。いつまでも幸せにと祈りたい。