サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

ミラクルレジェンド

【2013年 エンプレス杯】ピュアなハートがもたらすミラクルパワー

 3歳4月、阪神のダート1800mで5馬身差の圧勝を収めたミラクルレジェンド。昇級の壁もなく、翌月の阪神(ダート1800m)、あおぎりSと3連勝で突き進んだ。

「桜花賞出走が念頭にあり、デビューして3戦は芝へ。その目標を断念してダートで再始動させたら、予想以上の適性があった。どこにあんなパワーが潜んでいるのか、不思議に思えたよ。やはり血統だね」
 と、調教パートナーを務めた荻野仁調教助手(藤原英昭厩舎)は振り返る。

 長年に渡り、様々なカテゴリーへトップホースを送り出したフジキセキが父。カネヒキリをはじめ、ダートでの成功例も多い。母パーソナルレジェンド(その父オーサムアゲイン、米6勝)はダート9ハロンのG3(ターンバックジアラームH)の勝ち馬。G1・パーソナルエンスンSでも2着している。ローマンレジェンド(東京大賞典など重賞を4勝)は、同馬の半弟にあたる。

「小柄なミラクルレジェンドがあれだけ走るんだから、体格に恵まれたローマンレジェンドのすごさもわかってもらえると思う。姉が教えてくれたことを弟にも生かすことができた。若駒のころは前向きさに欠け、稽古で目立たなかったあたりが一緒。でも、奥があって、学習能力にも優れているんだ」

 ジャパンダートダービーは4着に敗れたものの、スタートで躓いたのが敗因だった。次の目標をレパードSに定め、これまでとはワンランク上の仕上げを施せた。

 牡の強豪が揃ったなか、単勝3・3倍の2番人気を背負って登場。後方に置かれ、同馬にも息の入らない過酷なペースが刻まれた。それでも、直線では抜群の勝負根性を発揮する。100キロ近くも大きなグリッターウイングを競り落としてゴール。着差はハナだったが、底知れない強さが伝わってきた。

「思ったより位置取りを悪くしたし、追走に余裕がなくて。馬群を縫いながらの進出となったが、どこからでも競馬ができる自在性があるうえ、外見の印象より芯がしっかりしているからね。一般的なダート巧者とはちょっと異なるスピードの乗り。大きなストライドも弟との共通点だよ。それに、なんといってもハートがすばらしい」

 以降は地方主催の交流重賞に目を向け、クイーン賞に優勝。TCK女王盃(2着)、エンプレス杯(3着)、マーキュリーC(5着)と勝ち切れないレースが続いたが、思い出の新潟(関越S)で鬱憤を晴らした。これがひと皮むけるきっかけとなり、レディスプレリュード、JBCレディスクラシックと制し、砂戦線の女王に君臨した。

「使うたびに成長して、いよいよ完成の域に。会心のパフォーマンスだったね。牝なのに長く好調を維持でき、狙ったレースできっちり結果を残してくれた」

 以降もマリーンCを順当勝ち。2度目となるレディスプレリュード、JBCレディスクラシックでも栄光を手にしたうえ、ラストランとなるエンプレス杯では単勝1・1倍の断然人気に応えた。

「パーフェクトなレースで有終の美。大きな夢をかなえてくれ、たくさん感激を与えてくれた。頭が下がるよ。世界を相手に戦えるような子供を送り出してほしい」

 6歳2月まで上昇カーブを描き、余力を残した状況での繁殖入り。グレートタイム(5勝、ユニコーンS2着、ジャパンダートダービー3着)、ミラクルティアラ(4勝)ら、産駒の成績も優秀であり、さらなる逸材の登場が待たれる。ぜひ母仔2代に渡るタイトル奪取を果たしてほしい。