サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

ミッキードリーム

【2011年 朝日チャレンジカップ】夢に満ちた果敢なチャレンジ

 2歳8月、小倉の芝1800mでターフに初登場したミッキードリーム。3着に敗れたものの、馬群をこじ開けて伸ばした脚は目を引いた。しかし、レースの反動が出て体調を崩し、いったん放牧へ。位置取りの差でコンマ2秒差の5着に終わった11月の京都(芝2000m)を経て、暮れの阪神、芝1800mで初勝利を収める。クビ差の2着はきさらぎ賞を制したネオヴァンドームだった。

 2年連続してチャンピオンサイアーに輝き、様々なカテゴリーに一流馬を送り出したキングカメハメハの産駒。母フローリッドコートはサンデーサイレンスの肌であり、祖母のスプリングコート(4勝)がサクラバクシンオーの半妹にあたる。セレクトセール(当歳)での落札価格は5000万円。もともと大きな夢が託された逸材だった。

 福寿草特別を3着した後、つばき賞では京都新聞杯に勝つゲシュタルトを差し切った。毎日杯(2着)で先着を許したのは、NHKマイルCで驚異の日本レコードをマークするダノンシャンティである。

「デビュー自体は早かったけど、かつては体質が弱かった。それに、これからというタイミングで右ヒザを剥離骨折。1年近くのブランクがあったからね。ずいぶん遠回りをしたが、ぐんとたくましくなって手元に戻ってきてくれたんだ。調教の動きも別馬のよう。久々ではあっても、中山記念(11着)だって状態には自信を持っていたよ。ところが、一気にテンションが上がってしまい、返し馬で燃え尽きてしまった。だいぶ落ち着きを取り戻した大阪杯(9着)でも、前半からハミを噛み、気持ちがあせっているように映ったね」
 と、音無秀孝調教師は振り返る。

 都大路Sを2着。クラス再編成がきっかけとなり、すっかり勢いを取り戻す。押し出されてハナに立った三宮特別は、物見をしながらも悠々と押し切り。大文字Sも好位から危なげなく抜け出した。

「本来は素直で乗りやすいタイプ。きちんと修正することができた。朝日チャレンジCは負けられないと思っていたし、もっと大きな舞台への通過点だと見ていたよ。4勝すべてを1800mで挙げているとはいっても、集中力が向上。実際、1ハロンの延長も苦にしなかった」

 スローペースのなか、中団で折り合う。4コーナーから一気にペースが上がり、懸命に押す必要があったが、手応え以上に渋太く脚を伸ばした。きっちり捕えてゴール。上位4頭がハナ、クビ、ハナ差という大接戦ではあったが、単勝2・8倍の1番人気にふさわしく、力でねじ伏せる強い内容だった。

 毎日王冠は3着。大外からラスト32秒9の破壊力を駆使した。だが、天皇賞・秋(8着)、マイルCS(8着)とG1の壁に跳ね返されると、徐々に本来の闘志が薄れてしまう。

 6歳時に続き、7歳でも中京記念を2着しながら、結局、2つ目のタイトルには手が届かなかった。8歳の中京記念(14着)がラストラン。乗馬に転身し、静かに余生を送っている。

 軌道に乗るまでに時間がかかり、晩年もじれったさが付きまとったミッキードリームの競走生活。それでも、充実期に演じた3連勝は、胸がときめくパフォーマンスだった。最後まで夢を追い求める姿も、しっかりと目に焼き付いている。