サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

メーデイア

【2013年 スパーキングレディーカップ】七夕の夜に煌めく神々しき王女

 社台サラブレッドクラブにて総額1400万円で募集されたメーデイア。カワカミプリンセスやローレルゲレイロといったターフのトップランナーだけでなく、地方競馬でも多数の重賞勝ち馬を誕生させているキングヘイローが父である。母ウィッチフルシンキング(その父ロードエイヴィー)はアメリカで12勝をマーク。パッカーアップSをはじめ、グレード競走を4勝した。マンティスハント(サングレーザーの母)や福島牝馬Sを制したロフティーエイムは同馬の半姉にあたる。

「当歳時より綺麗なシルエット。体格にも恵まれました。ただ、中身が伴ってくるのは遅かった。手元に来てからも、骨質に弱さがあり、ソエや骨瘤に悩まされましたよ。成長過程に合わせ、あせらずにステップを踏みました」
 と、笹田和秀調教師は若駒当時を振り返る。

 2歳12月、栗東に入厩。ただし、ゲート試験をパスすると、いったん放牧を挟んで心身を整え直す。3月に帰厩し、阪神の未勝利、ダート1200mに向かったものの、前半から置かれ、16着に沈む。タイムオーバーの制裁を受けた。

 8月の小倉(ダート1700mを3着)より再スタート。続く阪神、ダート1800mではスタートも決まり、5馬身差の快勝を収める。その後はたっぷり間隔を開けながら同距離を歩み、11月の新潟でクビ差の2着に前進。4歳2月、阪神にて6馬身差の逃走劇を演じた。続く1000万下も厳しい流れを5着に踏み止まると、脚元が固まったことで芝へチャレンジ。御室特別(3着)や阪神の芝1800m(2着)でも見せ場をつくった。続く6月の阪神(ダート1800m)は圧巻のパフォーマンス。直線手前で先頭に立ち、8馬身もちぎるワンサイド勝ちを収める。

「とても大人しく、扱いやすいタイプ。その反面、かつては輸送や環境の変化におどおどするデリケートさを併せ持っていたのですが、一戦ごとに慣れ、走り出せば闘志を出してくれる。肉体面の強化も目覚ましく、骨格にふさわしい筋肉が備わってきました」

 さらなる飛躍に備え、5か月半のリフレッシュを経ると、一段と充実。順当に1000万下を突破し、初夢Sも2着。TCK女王盃に臨み、初のタイトルを手にする。マリーンCも、危なげない勝ち方だった。

「ヴィクトリアマイル(17着)で大敗しただけに、リズムを崩してしまったのではと、そう楽観視はしていなかったのですが、スパーキングレディーCで一変しました。ダートならきちっと結果を出してくれます。慣れないナイター競馬やコーナーがきつい川崎コースに戸惑った様子を見せながらも、想定通りの2番手。直線で並ぶところまでモタモタしたとはいえ、交わしてからは楽でしたね。いよいよ完成の域に。この勝利で秋の目標がはっきり定まりました」

 レディスプリュードで連勝を飾り、いよいよG1・JBCレディースクラシックへ。同年は金沢のダート1500mでの開催だったが、忙しい小回りの流れにも難なく対応する。悠々と抜け出し、後続に3馬身の差を広げた。滅多に見られない単勝1・0倍の支持に応え、その名(ギリシャ神話に登場する王女)の通り、砂路線における絶対女王の座を固める。

「すっかり本格化した態勢にあり、飼い食いが旺盛。レースから逆算して調整すれば、きちっと仕上がります。なんとしても負けられない舞台。負けないだろうとの自信もありました。1コーナーで2番手をキープした時点では勝利を確信していましたよ」

 JCダート(10着)き強力牡馬の壁に跳ね返されたとはいえ、前年より3キロ増となる57キロの斤量を背負いながら、TCK女王盃に優勝。地方の交流重賞を6連勝という偉業を成し遂げたうえ、繁殖入りした。

  ディクテオン (浦和記念、名古屋グランプリ、白山大賞典、川崎記念2着) の母となり、繁殖としても評価を高めたメーデイア。さらなる大物の登場を待っている。