サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

メドウラーク

【2018年 七夕賞】願いを込めて羽ばたいた七夕の空

 ノーザンファーム早来より、2歳6月に函館競馬場へ移動したメドウラーク。だが、ゲート試験の合格まで進んだところで、疲れに配慮してリフレッシュを挟む。10月には栗東に移動したものの、なかなか体温が安定せず、再度の放牧へ。ようやく態勢が整ったのは、2月の京都(芝2000mを2着)だった。

「元気がありすぎるほどで、調整はしやすいのですが、いろいろ弱いところがあり、大切に仕上げる必要がありました。常歩で暴れたり、気持ちも若くて。しばらくは力みが強く、なかなか戦法が噛み合わない。いい脚を使っても勝ち切れなかったんです」
 と、橋田満調教師はデビュー当時を振り返る。

 ブライアンズタイムの代表的な後継であり、ウオッカを筆頭に数々の活躍馬を送ったタニノギムレットの産駒。祖母がエリザベス女王杯を制し、オークスやドバイワールドCを2着したトゥザヴィクトリーであり、母アゲヒバリ(その父クロフネ、地方4勝)の半弟妹に重賞ウイナーのトゥザグローリー、トゥザワールド、トーセンビクトリーら。青葉賞やセントライト記念に勝ったリオンリオンは同馬の半弟にあたる。

「父の仔を手がけるのは2頭目。他との比較はつかないのですが、優秀な母系との配合が合ったのでしょうね。しっかりした骨格。パワーがある一方、フットワークは大きく、伸びやかに走れます。もともと長めの芝向きと見ていました」

 未勝利脱出に6戦を要したとはいえ、3走が2着であり、いずれも掲示板を確保。7月の中京(芝2200m)を豪快に突き抜ける。ここで右前の蹄を傷めるアクシデントがあり、半年間のブランク。それでも、この間の体質強化は目覚ましかった。

 1月の京都(芝2200)こそ6着に敗れたが、金山特別で2着に前進。小倉城特別を勝ち上がると、淡路特別、烏丸Sと立て続けに突破。力強い伸び脚を駆使し、ジューンSで4連勝を飾る。スローの決め手比べにもきちんと対応。2着にコンマ2秒差を付ける完勝だった。

「操縦性に粗削りな部分が残っていたとはいえ、精神的にもいいほうへ向かっていました。長くスタミナが持続しますので、全体的に流すかたちなら、持ち味を発揮できます」

 ところが、新潟記念(9着)以降は勝利から遠ざかる。一番の原因は喘鳴症にあった。5歳時にノドに手術を施したが、成績の向上につながらない。ダートや距離短縮などの効果もなく、6度、掲示板を確保しながらも、7歳夏まで21連敗を喫する。

 ブービー人気(単勝100・8倍)まで評価を落として臨んだのが七夕賞。後方2番手の位置取りとなったが、荒れた馬場状態にもかかわらず、1000m通過が58・2秒のハイペースとなる。大外に持ち出して3コーナーから動いたマイネルサージュ(2着)に馬体を併せて進出を開始。手に汗握る攻防をクビ差だけ退け、待ちに待った重賞制覇がかなった。

「地面が緩んだコンディションに加え、呼吸が楽な梅雨時の湿った空気も味方となりました。即座に反応できないので、馬込みに入るのは避けてほしいと丸田くん(恭介騎手)には話したのですが、勝負どころの判断が絶妙でしたね。誉めてあげないと。持ち味をフルに引き出してくれました」 

 その後も新潟記念で5着し、サマー2000シリーズに優勝。8歳になると障害レースに転向。初戦では7馬身差の快勝を収めただけでなく、中京のオープン、さらに阪神ジャンプSも制する。翌シーズンはペガサスジャンプS(2着)や新潟ジャンプS(2着)で見せ場をつくったうえ、ノーザンホースパークで乗馬となった。

 長き苦難を乗り越えて、天高く羽ばたいたメドウラーク(マキバドリの意味)。大逆転の競走生活をたどれば、新たな勇気が沸き起こってくる。