サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
レインボーダリア
【2012年 エリザベス女王杯】秋雨を跳ね除けて咲かせた夢色の大輪
サンデーサイレンス、トニービンとともに次々と大物を輩出し、日本競馬に黄金期を築いたブライアンズタイム。20年連続して産駒の重賞制覇を果たしているが、最後にタイトルを手にしたのがレインボーダリアだった。しかも、燦然と輝くG1の勲章。父の強靭さをストレートに受け継いた逸材だった。
母アローム(その父ノーザンテースト)は2勝をマークした。同馬の兄姉にヒダカプロテクター(5勝)、フェスティヴマロン(3勝)、キアーロ(3勝)ら。ダイヤモンドSを制したトゥインクルは従弟にあたる。
3歳1月に中山のダート1800m(5着)でデビュー。芝に転じても3着、3着と堅実に走り、中山の芝1600mを勝ち上がった。スイートピーSも4着を確保。2着を2回重ねたうえ、湯浜特別で2勝目をマークする。3着、2着の惜敗を経て、摩周湖特別に差し切り勝ち。秋華賞(8着)へも駒を進めた。
半年間のリフレッシュ後も、掲示板を外したのは直線で不利を受けた福島牝馬S(6着)のみ。大倉山特別はコースレコードを更新する快勝だった。4歳秋はエリザベス女王杯に格上挑戦。5着に健闘している。
得意の北海道シリーズ(五稜郭S)で準オープンを卒業。この間もヴィクトリアマイル(12着)を除けば、すべて5着以内だった。クイーンS(4着)、府中牝馬S(4着)でも、終いは確実に脚を使っている。
そして、再びエリザベス女王杯の舞台を踏む。雨が降りしきり、生憎の重馬場となったが、パワーも兼備した個性。前半はじっくり折り合いに専念していたが、勝負どころより力強く前進を開始する。直線は渋太く粘るヴィルシーナ(2着)との手に汗握る追い比べ。外からクビ差だけ競り落とす。7番人気(単勝23・0倍)の低評価を覆し、みごとに大輪を咲かせた。ベテランの柴田善臣騎手も、満足そうに笑みを浮かべる。
「前走の伸びがすばらしかったし、追い切りに跨り、さらに状態が上がっていると感じていた。去年は硬い芝だったので、実績馬が強い競馬をしたけれど、緩い馬場になったぶん、これならチャンスがあると思ったね。位置取りにこだわりはなかったが、4コーナーまでリズムに乗って回ってこれ、直線に向いたときにはなんとかなると。最後まで懸命に走ってくれた。とても性格がいい馬なんだ。実戦でも操縦しやすいのが心強い。G1でフルにポテンシャルを発揮でき、ほんとうれしいよ」
ただし、全力を尽くした反動は大きかった。6歳シーズンは6戦を消化したが、徐々に本来の闘志が薄れていく。思い出のエリザベス女王杯(13着)を走り終え、引退が決まった。
いまのところ活躍馬を送り出せていないものの、繁殖としても明るい未来へと夢色の虹をかけても不思議はない。