サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

レイカーラ

【2013年 ターコイズステークス】厳寒のターフに閃光を放った高貴なレディー

 ダノンシャーク(マイルCSなど7勝、種牡馬)の母として名を高めたカーラパワー(その父カーリアン、イギリス産、フランスで2勝)。トップサイアーのキングカメハメハが配され、G1ホースのひとつ下に生まれたレイカーラも、奥深い資質を見込まれた原石だった。

 どんな種牡馬でも堅実に走る繁殖であり、姉兄のターキー(3勝)、ワキノパワー(3勝)、スティルゴールド(4勝)、半弟にあたるボブキャットもコンスタントに良績を収めた。凱旋門賞などG1を6勝し、仏チャンピオンサイアーとなったモンジューもこのファミリーの一員である。

 下河辺牧場での育成を経て、2歳10月、美浦に移動。短期間でゲート試験をパスしたものの、まだ繊細さが目立つ状況だった。近郊のミッドウェイファーム内ブルーステーブルでしっかり基礎体力を養い、12月に帰厩する。翌月の中山、芝1800mでデビュー。出遅れを跳ね除け、3着に健闘した。

 当初はテンションが上がりやすく、過敏に反応。だが、適切に勝負のタイミングを見据え、フルに能力を引き出すことで知られる堀宣行厩舎の所属らしく、着実に前進していく。4月の中山(芝1600m)をあっさり差し切り。大切に間隔を開け、7月の新潟では2勝目をマークした。昇級後も3着、2着、5着と崩れず、4歳3月の鎌ヶ谷特別を大外から豪快に差し切る。

 パールS(5着)を経て、弥彦特別で順当勝ち。ユートピアSも、早めに先頭に立って2着を確保した。このころになると、体重が20キロほど増え、すっかり中身が充実。レース運びが安定したうえ、末脚にも鋭さを増してきた。

 夏向きの個性ではあったが、ターコイズSでも張りの良さを維持していた。ハイペースのなか、慌てず中団で待機。直線はロスなく馬群をさばき、目の覚める決め手を発揮する。流れに乗って懸命に粘るノボリディアーナ(後に府中牝馬Sに優勝)をきっちりハナ差だけ交わし、歓喜のゴールへと飛び込んだ。

 久々に手綱を託された石橋脩騎手にとっても、期するものが大きかった一戦。調教から跨り、頻繁にコミュニケーションを図ってきた仲である。持ち味を存分に引き出し、こう笑みを浮かべた。

「環境の変化に動じなくなり、精神的な成長を感じていましたし、ますます追い切りの動きも上向き。格上挑戦でしたが、ハンデ(53キロ)は手ごろです。スタートを出てくれましたし、道中も馬の後ろできちんと我慢が利きました。どこかで前が開いてくれと祈っていて、進路が見えたときも瞬時に伸びてくれましたね。この先のタイトルに向け、ここは負けられないと思っていましたので、ほっとしましたよ。馬に感謝するしかありません」

 東京新聞杯は6着だったものの、前がふさがりながらもコンマ3秒差。だが、以降は心身が噛み合わず、重賞で4連敗を喫する。1番人気に推されたターコイズ(9着)も不完全燃焼。まだ余力は残っていたが、価値ある血筋だけに、京都牝馬S(18着)を走り終えると引退が決まった。

 インターミッション(3勝)、シンリョクカ(新潟記念)らを送り出し、母親になっても存在感を示しているレイカーラ。新たな輝きを放つ逸材の登場が楽しみでならない。