サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
ロンドンタウン
【2017年 佐賀記念】日本を縦断して異国まで続くロンドン紳士の遥かなる旅路
HBAサマーセール(1歳)にて880万円で落札されたロンドンタウン。JCダート2回をはじめ、砂戦線のG1を7勝したカネヒキリが父であり、母フェアリーバニヤン(その父オナーアンドグローリー)は南関東で2勝を挙げている。同馬の半姉にカゼノサファイア(3勝)ら。叔父母のペルルノワール(4勝)、ミヤジエルビス(5勝)もダートで活躍した。牧田和弥調教師は、こう幸運な出会いを振り返る。
「セール当時も、がっちりした馬体。この血統らしいパワーを見込んでいましたよ。穏やかな性格で扱いやすく、福山育成牧場での乗り込みも順調。2歳秋の入厩以降、調整に苦労はありませんでした」
東京で迎えた新馬(ダート1600mを6着)は、ハナに立ちながら後退。京都のダート1200mで2着に前進したうえ、同条件を順当に勝ち上がった。昇級後2走も掲示板に載り、東京のダート1400mで後方一気が決まる。
「短めの距離でもムキにならず、教えたことを素直に吸収。中身が伴うのに時間がかかりましたが、ほんとタフです」
さらに3戦を消化した後、きっかけがつかめたのは天草特別(2着)だった。西日本スポーツ杯は5馬身差の楽勝。内房Sも連勝してオープン入りを果たす。
武蔵野S(8着)や東海S(7着)は伸び切れなかったものの、積極的にレースを重ねて強靭さを増していく。中1週で臨んだ佐賀記念は2番手から抜け出す危なげないパフォーマンス。後続に4馬身差の差を付け、ついにタイトルに手が届いた。
「コンスタントに使っても飼い葉をよく食べ、疲れなど見せない。右肩上がりに力を付けている実感がありましたね。思い通りのローテーションが組めたうえ、輸送や環境の変化も堪えません」
マーチS(4着)、アンタレスS(2着)と健闘。平安S(12着)で思わぬ苦杯をなめたが、ここでリフレッシュを挟んだ効果は絶大だった。しっかりと立て直されてエルムSに挑むと、直線で鋭い差し脚が炸裂する。前が止まらない高速馬場を克服し、コースレコードで優勝を飾った。
「小回りの札幌で器用な競馬。すっかり競馬を覚え、自在性も高めてきました。見違えるように、長くトップスピードが持続。伸び切った感じだったフォームが詰まり、力強く四肢を繰り出せるようになりましたよ」
次のターゲットは、韓国のG1・コリアC。広いソウル競馬場で主導権を握って突き放し、4馬身差の圧勝劇を演じた。フレッシュさが長続きせず、以降は6連敗したとはいえ、5歳時もエルムSを4着に善戦し、再びコリアCに駒を進めた。前年に自身がマークしたレコードタイムをコンマ1秒更新。しかも、2着に15馬身の大差を付けるワンサイド勝ちだった。
6歳シーズンの7戦は未勝利だったものの、マーチS(2着)、アンタレスS(3着)、日本テレビ盃(2着)などで確かな実力を再認識させたロンドンタウン。全34戦を懸命に駆け抜けた。
韓国に渡って種牡馬入り。性格の真面目さや健康な体質は、きっと産駒へと伝わるに違いない。