サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

サンライズメジャー

【2014年 米子ステークス】丹精込めて磨かれたメジャー級のポテンシャル

 3歳5月の京都(芝1800m)で順当に初勝利を上げたサンライズメジャー。早めに先頭に立ちながら、メンバー中で最速の上がり(3ハロン34秒4)を駆使して差を広げ、後続に2馬身半差を付ける。昇級の壁もなく、中1週で臨んだ京都の芝1600mを鮮やかに逃げ切った。しかも、3馬身差のワンサイド勝ち。管理した増本豊調教師(2013年に逝去)は、こう声を弾ませた。

「走るたびに進歩しているのが心強いね。付くべきところに筋肉が付けば、もっと体が良くなるだろう。引っ張らずに競馬ができるマイルが合っている。それでも、まだ自由きままに走っている段階。レースを覚えてくるのはこれからだよ」

 大舞台に強く、カレンブラックヒル、コパノリチャード、メジャーエンブレム、レーヌミノル、アドマイヤマーズ、レシステンシア、セリフォス、アスコリピチェーノら、続々とG1ウイナーを誕生させているダイワメジャーが父。母ティファニータッチ(その父デピュティミニスター)はアメリカで5勝した。祖母のケアレスエリスがボウゲイH、ボイリングスプリングスH(いずれも芝9ハロン)と重賞を2勝している名ファミリーの出身である。

「父にしては顔に品があり、すらっとしたシルエット。初めて見た当歳時でも、バランスの良さは目立った。下河辺牧場で十分に乗り込まれ、年明けに入厩。ただ、坂路の入り口でただをこねたり、精神面が幼くてね。気持ちを曲げないよう、慎重に仕上げたんだ」

 以降はデリケートなメンタルに寄り添い、長めに間隔を開けながら育てられた。課題を抱えていたゲートに関しても、根気強く接して改善。3歳11月の復帰後、4歳12月に南総Sで準オープンを卒業するまで8戦を要したものの、掲示板を外したのは外枠発走となった江の島特別(12着)のみ。粗削りな状況にあっても確かな性能を示していた。

 5歳になり、開業2年目を迎えた濱田多實雄厩舎に移って再スタート。安土城S(2着)から豪快な伸び脚を発揮する。待望のオープン勝ちを果たしたのが米子Sだった。後方で折り合いを付け、大外から鋭い決め手を駆使。あっさり抜け出す完勝だった。濱田調教師も満足げに笑みを浮かべる。

「転厩前の京都金杯(10着)や小倉大賞典(10着)時は精神的に苦しい部分があったのでしょう。しっかりリフレッシュされ、いい状態で始動させることができました。普段は落ち着いていますが、調教でも行く気があり余り、操縦が難しいタイプ。それでも、ずっと跨ってきた乗り手も一緒に移籍してきましたので、安心して任せることができました。もっとバリバリ追いたくなるのを我慢し、力を温存させたのが結果につながりましたね。それぞれの特徴に合わせた仕上げが重要だと、改めて認識。この馬で学んだことは、いまでもチームの礎になっています」

 秋シーズンはポートアイランドS(3着)をステップに、スワンSで2着に健闘。翌春にマイラーズCを2着し、安田記念(11着)へも駒を進めた。2度目となる米子S(7着)、スワンS(7着)と脚踏みしたが、キャピタルSを勝ち切り、改めて優秀なポテンシャルを証明する。

 その後も京王杯スプリングCで2着を確保。7歳時のタンザナイトSが最後の勝利となったが、ラストランとなる霜月S(9着)に至る間に、オーロC(3着)、かきつばた記念(3着)、アハルテケS(2着)などで見せ場をつくり、9歳まで息長く活躍した。

 メジャー級の球速に加え、絶妙なコントロールも身に付けたサンライズメジャー。ダートとの二刀流にもチャレンジした。渾身のストライクを投げ込む勇姿が忘れられない。