サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
ラヴェリータ
【2011年 スパーキングレディーカップ】夏夜に放った真実一路の煌めき
大山ヒルズで育成されていた当時から、高い資質を見込まれていたラヴェリータ。雄大な馬格の持ち主でありながら、仕上がりも早く、夏の函館(芝1800mを9着)でデビューした。札幌の芝1500mも5着に敗れたものの、3か月のリフレッシュ後に真実(イタリア語でラヴェリータ)の強さを発揮し始める。京都のダート1400mを4馬身差の圧勝。もともと砂戦線での活躍が想像されていた。
多数のG1ウイナーを輩出しているアンブライドルズソングが父。母ゴークラシック(米3勝)は、ミスタープロスペクター系を発展させたゴーンウエストの肌であり、ハローシアトル(G1・マザリーンS)、ダンススマートリー(G1・BCディスタフ)らが近親に居並ぶ魅力的なファミリー。キーンランドの07年セプテンバーセールにて購買された。
ポインセチア賞をレコード勝ち。続くヒヤシンスSも、クビ+クビ差の3着だった。昇竜Sでは、牡の一線級を完封。勝ちタイムの1分43秒6は、開催中で最速となる優秀なものである。後続を5馬身も置き去りにして、関東オークスで初重賞制覇を飾る。初対決となった古馬を撃破しスパーキングレディーCも連勝と、早くもトップクラスに君臨した。
持ち乗りで担当した牧口裕一調教助手は、こう快進撃を振り返る。
「オン・オフの切り替えが極端で、競馬へ行くと一気にテンションが上がります。そんな特徴や天性のスピードからも、距離はマイルまでかとも思っていたのですが、走り出せばむしろリラックス。普通は止る流れでも、この仔にとってはマイペースなんです。フィリーズレビュー(6着)やローズS(13着)を見ても、芝ではテンからエンジンを吹かさないと前へ行けません。だから、スタート地点もダートがいい」
その後のダート重賞は4連敗。ただし、調子自体に問題があったわけではない。ゲートで後手を踏んでしまうパターンに泣かされた。4歳になって、またひと皮向け、レース運びが安定。控える戦法も板に付いた。名古屋大賞典、スパーキングレディーCで重賞に勝っただけでなく、シリウスSを2着。身体面の充実も顕著だった。
5歳シーズンは、TCK女王盃、エンプレス杯に優勝。そして、スパーキングレディーカップCの3連覇を達成する。早めに先手を奪うと、楽々と一人旅。後続に6馬身差を付ける圧勝だった。
「ますます乗り味が豪快に。デビュー当時と比べ、体重が20キロくらい増えました。普段は大人しく、とても人懐っこい。飼い葉をもりもり食べてくれ、一段と幅が出てきたんです。ダイナミックなストライドがより柔らかく、大きくなりましたね」
レディスプレリュード(2着)、JBCレディスクラシック(2着)と健闘したうえ、ラストランのJCダートも4着に食い下がっている。余力を残して繁殖入りした。
2024年、この世を去ってしまったが、初仔のネフェルティティ(1勝)がラムジェット(東京ダービー、ユニコーンS)の母 になるなど、牝系は未来へと発展中。新たな栄光を一族に運ぶスターの登場を待っている。