サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
リアファル
【2015年 神戸新聞杯】ターフで覚醒したパワフルな秘宝
キャロットクラブにて総額5000万円で募集されたリアファル。母クリソプレーズ(その父エルコンドルパサー)は3勝をマークした。その兄姉にシースルオール(5勝)、タンザナイト(3勝)、アドマイヤダンサー(3勝)らがいて、JCダートに勝ったアロンダイト(5勝)は全弟にあたる。愛オークス馬となった曽祖母リーガルイクセプションに連なる重厚なファミリー。クリソライト(ジャパンダートダービー、コリアCなど重賞を6勝)、マリアライト(エリザベス女王杯、宝塚記念)は同馬の兄姉であり、半弟のクリソベリルもジャパンダートダービー、チャンピオンズC、帝王賞でダート界の頂点を極めることとなる。
サンデーサイレンスの後継ながら、パワーやスタミナに優れた産駒が多く、大レース向きの底力にも富むゼンノロブロイが配されて誕生。高価な水晶である母名より連想され、リアファル(戴冠石。ケルト神話、ダーナ神族に登場するエリンの四秘宝のひとつ)と命名された。
ノーザンファーム空港での育成は順調に進行。2歳5月にはNFしがらきに移ってペースアップされ、8月初旬、栗東へ。ゲート試験に合格すると、いったん放牧を挟んで心身を整え直したうえ、11月に帰厩。丁寧に段階を踏んだ効果があり、大型ながら反応の良さが目立つようになった。
砂巧者を量産する血統背景だけに、阪神のダート1800mでデビュー。好位から抜け出し、あっさり新馬勝ちを飾る。昇級2戦目の京都で2馬身半差の快勝を収め、伏竜S(2着)、兵庫チャンピオンシップ(2着)、鳳雛S(2着)とオープンでも善戦した。
「クリソライト(父ゴールドアリュール)に似たイメージがあり、ダートもこなせると見ていたと一方、母はターフランナー。こちらはゼンノロブロイ産駒だけに、フットワークに柔らかみがある。もともと芝馬だと思っていた。春シーズンも若葉Sからクラシックを狙うプランだったのに、ソエが出てしまい、ダートで続戦。でも、痛みがすっかり治まり、いよいよ路線変更できる態勢が整ったんだ」
と、音無秀孝調教師は振り返る。
マレーシアCを悠々と逃げ切り、芝適性を証明する。スローペースや緩い馬場が味方したのは確か。ただし、直線では陣営が思い描いた以上の瞬発力を発揮した。
「ダートで賞金加算がかなっていたので、これならば菊花賞に進めると判断。神戸新聞杯でも、クリストフ(ルメール騎手)に『ハナを主張する馬がいたら、譲ってもいい』って伝えたのに、馬なりで先手を奪え、スローペースに落とせた。でも、2着(リアルスティール)と測色のない上がりを駆使して、2馬身差の楽勝。展開の利だけが勝因ではない。本番でもやれるって、自信を深めたんだけど」
いったんは2番手から先頭に躍り出た菊花賞。あと一歩の粘りを欠いたものの、クビ+半馬身差の3着に踏み止まる。さらなる前進は必至に思われたが、有馬記念(16着)で思わぬ失速。腱鞘炎を発症していた。
1年近くのブランクを経て、金鯱賞(5着)、アメリカJCC(13着)と歩んだところで、再び脚部に不安が。ポルックスS(9着)、白富士S(6着)、ブリリアントS(4着)、BSN賞(4着)と復調気配を示しながら、右前の屈腱に炎症が確認され、引退が決まった。
G1に手が届かなかったとはいえ、破格のポテンシャルを垣間見せたリアファル。神戸新聞杯での秀逸なパフォーマンスは、いつまでも奥深い輝きを放ち続ける。