サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

シーイズトウショウ

【2006年 CBC賞】夏を愛したスプリント界の淑女

 トウショウボーイ(皐月賞、有馬記念、宝塚記念)、スイープトウショウ(秋華賞、宝塚記念、エリザベス女王杯)など、数々のトップクラスを輩出したトウショウ牧場にあっても、シーイズトウショウは傑出したスピードを誇った逸材だった。母ジェーントウショウ(その父トウショウフリート)の姉兄にシスタートウショウ(桜花賞)、トウショウオリオン(北九州記念)らがいる優秀なファミリー。G1を7勝したウオッカも近親にあたる。配された父は、長年に渡って日本の短距離界を支えたサクラバクシンオーである。

 2歳8月に迎えた小倉での新馬(芝1000m)は2着に敗れたものの、翌週の芝1200mをあっさり逃げ切ったシーイズトウショウ。野地菊S(2着)、りんどう賞(3着)、ファンタジーS(2着)と健闘し、阪神JFでも4着に食い込んだ。

 なかなか勝ち切れないなかでも、紅梅S(3着)やチューリップ賞(4着)でも堅実に走った。13番人気で臨んだ桜花賞でも、好位を粘って2着を確保。オークス(12着)へも駒を進めた。

 3歳秋は短距離に的を絞り、使われながら前進。当時は暮れに行われていたCBC賞を好位から差し切り、ついに重賞ウイナーに輝く。展開や相手にかかわらず上位を賑わし、函館スプリントSで2つ目のタイトルを手にした。

 夏に向けて調子を上げた5歳時。テレビ愛知オープンをレコード勝ちし、函館スプリントSも連勝する。イレ込みがちな精神状態に課題を残しながら、芯は強い。イメージ以上の成長力も秘めていた。

 最も輝きを放ったのが、6歳シーズン。高松宮記念を3着。息が入らなかった阪神牝馬S(6着)を経て、6月に施行時期が移ったCBC賞に向かう。当年よりハンデ戦となり、牝ながら実質のトップハンデとなる57キロが課せられたこともあり、4番人気に甘んじていたが、4番手を進み、他馬の手が動き出しても持ったまま。ゴールに向けてしっかり伸び、あっさり抜け出す。完勝といえる1馬身差だった。

「思い通りのレース運び。直線で手前を替えず、1頭になってふわっとしたけど、なんとかムチに応えてくれた。年齢的な衰えなど感じない。大した馬だよ」
 と、パートナーの池添謙一騎手も能力を称えた。

 3連覇がかかった函館スプリントSは、ビーナスラインの大外強襲に屈して2着。キーンランドCも、正攻法で2着を確保した。果敢にセントウルSへ臨むと、3馬身の差を広げて勝利。サマースプリントシリーズの最終戦で逆転がかない、初代のチャンピオンに輝く。

 スプリンターズSは湿った馬場も響き、テイクオーバーターゲットの8着。香港スプリント(10着)、高松宮記念(8着)と歩んだところで引退が決定した。

 繁殖成績は優秀であり、トウショウピスト(6勝、函館2歳3着)、ブレイブメジャー (3勝)、ヴェルテックス(3勝、地方3勝、名古屋グランプリ、川崎記念3着、浦和記念3着)らを送り出した。トウショウ牧場は閉鎖されたものの、名門の血筋は未来へと発展を遂げていく。