サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
サンライズソア
【2018年 平安ステークス】空高く舞い上がった荒々しきファイター
名古屋大賞典を逃げ切り、4歳時に待望となる重賞初勝利を挙げたサンライズソア。ブリリアントS(14着)は出遅れて外々を回り、大きく期待を裏切ったものの、平安Sで一変。果敢にハナを奪うと、1馬身半の差を付けて後続を完封する。河内洋調教師も、さらなる前進を見込んでいた。
「前へ行けないと自らやめてしまう。でも、自分のバターンなら、早めに迫られても見違えるような勝負根性を発揮。気持ちひとつなんだ。順調にキャリアを積んできた割りに、すべきことをわかっていないところがあってね。ガタガタしがちなゲートが改善したら、もっと強さが際立ってくるはず」
サクセスブロッケン、ストロングリターン、エピファネイア、ルヴァンスレーヴら、大物を輩出したシンボリクリスエスが父。母アメーリア(その父スペシャルウィーク)は地方で2勝した。同馬の全兄にルドルフィーナ(3勝、地方4勝)。スワンSなど重賞を3勝したビハインドザマスクが祖母である。
「富田牧場での育成時代でも、しっかりした骨格。父らしく大きく育ったし、筋が通った母系だけに、成長力も見込んでいた。2歳6月に入厩した直後から、体力は豊富だった。楽々と動けたよ」
新潟の芝1600mで新馬勝ち。ゴールを過ぎても止まろうとせず、余力はたっぷり感じられた。ただし、新潟2歳S(7着)より3連敗。樅の木賞で2勝目をマークする。若葉S(11着)以降はダート路線を歩み、早速、青竜Sに快勝してオープン入りを果たした。
「芝の決め手比べでは持ち味が生きなかったが、ダート向きのパワーやスタミナを証明。それでも、2戦目以降は競馬を察知して気合いが乗りすぎ、発汗が激しくてね。パドックではパシュファイヤーを着け、馬場へ先出しして、落ち着かせるように工夫してきたんだ」
陣営の努力が実を結び、ユニコーンS(3着)、ジャパンダートタービー(2着)、武蔵野S(2着)と、グレードレースで健闘。なかなか勝ち切れないなかでも、仁川S(2着)までの歩みで3着以下は師走S(10着)しかなかった。
「勝って記念写真を撮ろうとしても、力を尽くした様子がなく、それはうるさくて。ずいぶんヒヤヒヤさせられたけれど、秘めた能力は底知れないよ。集中力を高められるよう、根気強く導いていきたかった」
数々のトップホースを知るトレーナーも、同馬の素質にぞっこんだった。シリウスS(3着)、JBCクラシック(3着)、チャンピオンズC(3着)、フェブラリーS(6着)と健闘。ソア(空高く舞い上がる、高くそびえるなどの意)との名の通り、ますますパフォーマンスは上昇すると思われたのだが、平安S(5着)を走り終え、蹄に不安を発症する。2年ぶりとなったアハルテケS(16着)を経て、太秦Sで3着に浮上。しかし、脚元への負担は大きく、引退が決まった。
イーストスタッドにて種牡馬となったサンライズソア。強靭な身体能力や荒々しき闘争心を受け継いだ産駒の登場が待ち遠しくてならない。