サアカスの馬たち 
~グレードレース メモランダム~

サクセスエナジー

【2018年 かきつばた記念】栄光のゴールへと集約させた熱きエネルギー

 2018年のかきつばた記念では早め先頭から渋太く後続を退け、待望の重賞制覇を飾ったサクセスエナジー。ただし、北出成人調教師は、さらなる前進を見込んでいた。

「いまだ伸びる途上。昇級緒戦だったコーラルS(6着)でも、好位へ行ける脚は見せていましたが、直線で他馬に囲まれたら、ふわふわして。小回りコースを味方に凌ぎ切れたとはいえ、先頭に立って頭を上げていましたからね。精神的な幼さが残り、全力を尽くしたとは思えません」

 高松宮記念を連覇したキンシャサノキセキが父。母サクセスアイニー(その父ジャングルポケット)は地方で7勝を挙げた。サクセスビューティ(フィリーズレビュー)が同馬の叔母。従弟にはフェブラリーSなどG1を3勝したサクセスブロッケンが名を連ねる。

「1歳で出会った当時でも、初仔なのにがっちりした大型。ダート向きの母系ですし、加藤ステーブルで乗り始めてからも、想像通りパワフルな動きを見せていましたよ。ところが、右前に腫れが出てしまって。トウ骨に張っている箇所があり、腱を圧迫する珍しい症状でした。軟骨を削り取る手術を施し、すっかり不安は解消。それでも、3歳2月の入厩以降も脚元に注意を払い、慎重な仕上げを心がけました」

 初戦はゲートで落ち着きを欠いたうえ、後方で砂を被り、6着に敗れたが、続く京都のダート1200mで差し切りを決める。抜け出して外へ逃げたのにもかかわらず、コンマ3秒秒差の完勝だった。5か月間のリフレッシュ後、8着、7着と苦戦したものの、11月の福島(ダート1700m)ではスムーズな先行策がかない、2着に前進する。

「調教は素直に走れるとはいえ、実戦での物見が激しいんです。チークピーシーズを着用した効果がありましたね。ただし、十分に脚があったのに、自らブレーキをかけ、交わそうとしなかった」

 そんな危さを抱えていても、12月の中京、ダート1400mを4馬身差で突破。ソラを使いながら、春待月賞も連勝する。なにわSは長く脚を駆使して差し切り。一気の3連勝でオープンに登り詰めた。

「この父らしく安定してスピードを生かせるようになりましたよ。メンタルに危うさを残しつつも、肉体面は着々と充実。しっかり集中できるようになったら、守備範囲も広がると見ていました」

 さきたま杯も連勝。ペースや展開に左右される面を残しながら善戦を重ね、ハナを切れた兵庫コールドT(2着)に続き、すばるSを逃げ切る。5歳春には黒船賞で3つ目となるタイトルを奪取した。さきたま杯(2着)以降、勝利から遠ざかったものの、6歳になって強靭さを増し、天王山S、栗東Sと貫禄勝ち。同年はオーバルスプリント、さらに兵庫コールドTで重賞の勲章を手にする。

 翌シーズンも東京盃を勝利。なかなか勝ち切れない特徴は変わらなかったとはいえ、それも同馬の魅力である。9歳の黒船賞(4着)まで全45戦(13着)をタフに走り抜いた。

 引退後は宮崎で種牡馬となったサクセスエナジー。熱きエネルギーを受け継いだ優駿の登場を期待したい。