サアカスの馬たち
~グレードレース メモランダム~
ガリバルディ
【2016年 中京記念】トップステーブルの英知に導かれた鮮やかな進攻
8月に新潟で迎えたデビュー戦は2着だったものの、暮れの阪神(芝1800m)を一気に差し切り、早くから確かな性能を垣間見せていたガリバルディ。イタリア1000ギニーを制したシェンク(その父ザフォニック)が母であり、同馬の姉兄にマルカシェンク(デイリー杯2歳S、関屋記念)、ザレマ(京成杯AH)らが居並ぶ良血である。
このファミリーらしく雄大な馬格を誇るうえ、父はトップサイアーのディープインパクト。調教パートナーを務めた荻野仁調教助手(藤原英昭厩舎)も、大きな夢を託していた。
「社台ファームで順調に乗り込まれ、2歳の5月末に入厩。あの時点でも、やれば動けそうな感触があり、ディープらしい切れも伝わってきた。ただし、仕上げには慎重さを求められたね。後肢が開いた独特のフォームなんだ。緩い馬場では大きなフットワークが空回り。トモの甘さが目立ち、ハミに頼って前のめりになってしまう。激しい気性に配慮する必要があったし、かつては輸送も苦手だった」
福寿草特別は3着。降雪によって代替開催となった共同通信杯(12着)では、再度の東京入りで大幅に馬体が細化してしまった。阪神の芝1600m(2着)、京都新聞杯(3着)と惜敗したが、札幌の芝1800mで順当に500万下を卒業する。
昇級後も3着、2着と前進。春日特別に競り勝った。ところが、ここで腸炎を発症するアクシデントに見舞われる。8か月間、じっくりと態勢を立て直し、京都(芝1600m)に勝利。好位から楽な手応えで抜け出し、逆瀬川Sも快勝した。
「ここまでは能力の違いで突破。依然として精神面にもろさを抱えていて、内臓も疲れやすかったから、間隔をたっぷり開けて使っていただけに、成長の余地は十分に残されていた。六甲S、都大路S、米子Sと連続して5着だったけれど、ようやく安定して好スタイルを維持できるように。いい状態で送り出せれば、重賞でも通用すると信じていたよ」
そして、中京記念に優勝。スタートで挟まれ、後方の位置取りとなったが、福永祐一騎手にあせりはなかった。がっちりと抑え、脚を温存。スローに流れ、直線の決め手比べとなったなか、馬群を割って豪快に突き抜ける。
「気持ちばかり先走っていた過去とは違い、勝つのにふさわしいレース運びができたのが勝因。骨格や筋肉がしっかりし、だいぶ乗り味も変わってきた。体勢が起き、バランスの取れた走りに。段階を踏んで調教を強化できたからね」
しかし、結局、これがベストパフォーマンスとなった。富士S(5着)、大阪城S(3着)、京成杯AH(2着)、マイラーズC(4着)などで見せ場をつくったが、徐々に闘志が衰えてしまう。7歳時の中京記念(10着)を走り終えると地方(5戦未勝利)へ移籍した。
敏腕ステーブルの英知が注がれ、堅実に戦果を挙げたガリバルディ(馬名はイタリア統一に貢献した軍事家より)。中京記念での鮮やかな進攻は、世代を越えて語り継がれていく。